うまれるまえのカデンツ

音楽と女の子についての考察

寄生虫とみパンサス 第1話

 

 

 

何かがおかしいことに気づいたのは去年の8月の終わり頃だった。まだまだ夏は終わらないと言わんばかりの太陽の勢いを感じていた午後4時ごろ。

学園祭の合唱の練習でピアノ伴奏をしていたあの子がまるで眠っているように見えた。

"まるで眠りながら演奏をしているようだ"と、その時は深く考えなかったけど

それは突然はじまったんだ。
学園祭当日、9/23だった…。


「あの子のことすきなんでしょ?」
ガラッと窓を開けて、樹の上に座る僕にそう話しかけたのは、あの子だった。

「どうして僕の姿がみえるの?」
あの子の姿をした女の子は無視してそのまま続けた。全く違う話し方で。僕の知らない話し方で。
「あなたずっと見てたよね。話してみたかった。」
レスポンスが不自由でとてもイライラした。
あの子のことだけを知りたかった。
「これだけは答えて。あの子はどこにいったの?」

彼女は答えない。
ずっとにやにやと薄ら笑いを浮かべている。

目の前にいる女の子がもはやあの子ではないことくらいはもう気づいている。
これはなんだ。何が起こっている?

 

「お前は誰なの?」

 

僕は死んだあとなぜかここを離れられなくて、世界はいつまでも地獄を見せる気なのかと絶望していた頃に、あの子をすきになって、それからずっと見ていたんだ。どうして気づかなかったんだ。

 

いくつも判断する材料はあった。
現にあの子の人格はここにはない。
これは間違いなく
今流行りの魂を喰らう寄生虫

 

「おまえ…とみパンサスだな」

 

その瞬間あの子の口から虫の脚のようなものが僕に伸びてきて、首を掴まれた。

 

「あの子は食べちゃったからもうどこにもいないよ。」

 

とみパンサスとは、最近流行している寄生虫だ。生きた人間に寄生し魂をゆっくり食べながら徐々に人格を乗っ取り、宿主を操って自殺し、死体に産卵を行うという。

 

「そう。我らが種はとみパンサス。魂を糧とする我らが種にとってお前のような霊体は最高の餌…。産卵には体力がいるんだ。お前には私の栄養になってもらうよ…」

 

僕の首を掴む力がさらに強くなった。

ああ、力が抜けて行く…

 

「すきな女に殺されるのって苦しいだろう…最高の余興だね」

 

僕自身がなくなってゆくのを感じながら、意識は不思議と冷静だった。

 

こんなことをずっと考えていられるくらいには。

 

(なんだこの虫は…僕はメンヘラだからすきな女に殺されるなら本望だ。そんなの最高のシチュエーションじゃないか。できれば首絞めで殺されたい。今の状況は泣いて喜んでいいはずだ。でもこいつはあの子の姿を借りただけの虫…!なんたる無念…!)


その瞬間、僕のメンヘラボルテージが仮装大賞の得点のメーターのごとくはね上がった。

「何をするだあ」
その瞬間僕は未知の能力を手に入れた。
頭にすらすらと呪文のようなものが流れ込んでくる。僕はその通りに叫んだ!

「滲み出す混濁の紋章
不遜なる狂気の器
湧き上がり・否定し
痺れ・瞬き
眠りを妨げる
爬行する鉄の王女
絶えず自壊する泥の人形
結合せよ
反発せよ
地に満ち
己の無力を知れ!!
破道の九十 黒棺!!!!」


それは一瞬だった。


目の前の女の子はあっけなくただの散り散りの肉塊になった。

とみパンサスとかいう虫は最後になんか言っていた気がしなくもないが死んだ…。


一瞬のことすぎて、脳内がはちゃめちゃになった。足元に落ちているそれをみて
脂肪って黄色いんだな、と思った。
空は青いね、と同じテンションでいまの状況を整理している自分と、身体中をひっくり返されたようなショックで心臓が爆発しそうな自分がいる。


鼓動の音が大きすぎて、まるで世界中に響いているような気さえしてくる。
そのくらい、周りは静かだ。
ここだけ世界を切り取ったみたいに。


起きた出来事をゆっくりと反芻していた。
しなければならないと必死になった。
落ち着け、落ち着け
そうか、僕は
あの子を殺してしまった、
僕の手で殺してしまった、
すきなあの子を殺してしまった…


不可抗力だろうか。ゆるしてくれるだろうか。

海燕様…………」


黒髪ロングで巨乳でぴちぴちの白いワンピースに胸元で青いリボンを結ぶツインテールのあの子が
だいすきだったよ。

思考は止まらなくなってゆく。

かわいくて、見ているだけで幸せだった。
そんな特別な存在を、僕は、僕は、僕は…

 

 

 


やべえめっちゃ興奮する。
実体だったら勃ってた。
死んでてよかった〜( ◠‿◠ )

 

 

 


大好きな女の子をこの手で殺して
僕のものにしたんだ。
僕によってあの子はぐちゃぐちゃになって
それでも可愛くて仕方がない、愛してる
この恋愛感情は本物だったんだ!
この飛び散った身体は僕のもの
魂を喰われてしまったあの子を
そうやって救ったんだ、この手で!

 

ショッキングなその出来事に
地縛霊だった理由を完全に忘れた僕は
この世に思い残すこともなくなったようで、

 

その時1本の光が空から射し込んだ。
その意味は誰の目にも明らかだろう。
僕にもとうとうお迎えが来たんだ。

 

自然と目から涙が流れていた。
あの光の向こうに
喰われたあの子はいないけど。
僕もとみパンサスに吸収されて、あいつの腹のなかであの子の魂と一緒になればよかったのかなあ。


そう考えるとすごく寂しいけど、でも。

 

「僕は行くよ…」

 

そして待つこと10分

 

困ったことがある。何も起こらないのだ。
僕はどうしていればよいのだろう。
天に向かってすしざんまいのように手を広げたり神に向かって手を振りながらジャンプしたり(これが本当の神推しというやつ)
全天界へ向けて恥を晒しきったのだがまだだめだとおっしゃる。

 

「イル・イラー…」

 

どうすればよいのか途方に暮れた頃
空からてろんと1本の糸が垂れてきた。


僕は知っているよこれは…


思考を遮るように声がした「蜘蛛の糸だよ」


それと共に地面からおびただしい数の手がボコボコと雨後のタケノコのように生えてきた。

ゆっくりと姿を表すそいつらのことを見ているしかできなかった。


直感でわかった。こいつらは地獄の住人だ。


数十人…いやそれ以上か。
その中の1人が口を開いた。


「普通の蜘蛛の糸とは少し違うけどね。これから始まるのは血みどろのトーナメント戦だよ…この中の1人だけが天国行きの切符を手に入れ、この糸を登ることができるのさ。」


どうして僕が地獄の連中と?
唖然として何も言えずにいたらそんな考えを見透かすようにそいつは続けた。


「どうしてすんなりと天国へ行けないのか解せないような顔をしているけど、お前は人を殺したんだ。当たり前だろう?チャンスが与えられているだけ恩赦だと思うんだね。」


どうして?「僕はあの子を救ったのに。」
すんなりと成仏はさせてもらえないらしい。僕に罪はないのに。


「君がいくらどう思っていてもこれは地獄と天界両方の決定だよ。さあ、闘ろうか。」


はやくここから逃げたいと思いながら一応彼に問うてみる。「闘わなければどうなるんだい?」
彼は少し呆れ気味に「その選択肢はないよ。逃げたって、天は見ているから。」と言った。


闘う覚悟を決める他、ないようだ。
ここを登り切ってもあの子はいないのに…。


正直もうどうだっていいと、白旗を上げようとしたその時


原型を留めずもはや地面のシミと化していたとみパンサスの死体から、魂が出てきた。そしてそのままそれは、天へと登っていた。
なんの淀みもなく、僕が思い焦がれている天へ、すいすいと泳いでいくように。
あれが誰の魂なのかはすぐにわかった。

「まだ消化されてなかったようだね。」「元の身体の持ち主の魂だ。」と、地獄の住人たちが口々に言った。


高揚した
間違いなくあの魂はあの子だ!
推測するに、完全に喰われてから時間が立っておらず、消化が進んでいなかったようだ。
あの子は生きてる!(死んでるけど)
あの光の向こうへ行けばあの子に会える。


となれば話は別だ。
何をしてでもなんとしてでも天界へ行かなければならない。はやく一つになるために。
「もうすぐ、一緒になれるから待っててね。」僕は呟いた。


とはいえ、僕は非力だ。本当に非力だ。生前のことはあまり覚えていないが、女からも馬鹿にされるくらいにはいわゆるモヤシであった。どう見ても武闘派の輩が多い中、どう切り抜ける?


そんなのひとつしかない。
金だ。金しかない。


でも僕はアルゼンチンペソしか持ってないんだ……地獄の通貨が何かは知らないが、アルゼンチンペソではないことは確かだろう。


四面楚歌を芯から感じている。僕はさながら三国志の…誰だろう。
いや、こんなクズはいない。


そしてそんなクズな僕の中では
この曲が頭でずっと流れていたんだ。

"何で皆、そんなに騒ぐの?何で皆、そんなに責めるの?
彼女を仕合はせにしちゃ駄目なの?僕の何がそんなにオカシイ?

僕は皆に悪意は無いのに。何で皆、そんなに責めるの?
彼女を仕合はせにした妬み?僕は心身喪失してない。"

 

「ぼさっとしてんなよ、どうせならお前から殺してやるぜ」
いつのまにかぼうっとしてしまっていたようだ、気がついたら囲まれていた。

そして僕は否応なく巻き込まれることになってしまった。どう見ても怖いお兄さんの風貌をしたそいつらに、刃を向けられながら………

 

次回第2話、天国行きを決めるトーナメント戦!

 

※つづかない
※もう考えられない

 

 


なんでこんな話書いたのってきかれても
書きたくなったからとしか言いようがないのが申し訳ないんですけど、ごめんなさい。体調不良期間中、暇すぎて、書いてました。

えっと、ハリガネムシという寄生虫から発想を得て最初書き始めたんですがパロネタばかりになってしまった。元ネタ載せますね


「何をするだあ」
ジョジョ第1部
「(中略)黒棺」
BLEACH 正直これがやりたかっただけ
海燕様………」
→同じくBLEACH
「黒髪ロングで(中略)胸元に青いリボンのあの子」
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ヘスティア
「イル・イラー」
→マギ
「アルゼンチンペソ」
→日常

最後の曲の歌詞は
グルグル映畫館の「僕」